相続税事例(10年以内に相続が連続して起こった方)

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こんにちは。
税理士の長野です。
今回も、私が相続税申告のお手伝いをしたケースについて、論点整理をしながら、簡潔に、ご紹介させて頂きます。
実際の事例を通じて、皆様の将来的な相続に備える一助になれば幸いです。

※個人情報が漏洩しないよう、家族構成や財産内容は脚色しているので、予めご了承ください。
【家族構成】
被相続人:父(92歳)
相続人:母(90歳)、相談者(63歳)
【財産構成】
土地:1億8,200万円
家屋:1,000万円
有価証券:800万円
現預金:2,000万円
合計: 2億2,000万円
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【相談内容】
父に相続が発生したため、相続税申告のご依頼
【ニーズ】
親族が立て続けに亡くなり、納税負担が重いがなんとかならないか。
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5年前に祖父が他界し今年は父が亡くなったの。

【論点】

相次相続控除を適用できないか。

【長野拓矢税理士事務所からの対応方法】

今回のお客様は、代々地主の方で、ご実家周辺で3,000㎡以上の土地を以前はお持ちだったそうです。それが相続の都度、納税のため切り売りし、今回の相続では約半分になっていました。
5年ほど前にも祖父の相続があり、そのときもご実家近くの駐車場を売却したそうで、今回の相続でも、残っている駐車場を売却しないと納税できないのではないかと不安に感じていらっしゃいました。

「この駐車場を売却したら納税できるかな?」

と、初めてお会いしたとき、駐車場を売却することを半ばあきらめ顔で仰っていたのが印象的でした。

【長野拓矢税理士事務所からのご提案】

土地を売却するにせよ、納税がいくら必要か分からなければ判断できません。
そのため、まずは「現状分析」です。

「土地を売却するためにも、まずはいくら相続税がかかるか試算を行いましょう」

とご案内しました。
試算した結果、相続税が下記のように配偶者の税額軽減を使用しても、2,000万円ほどかかることが分かりました。
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そのため、

「駐車場を売却しないと納税できないかもしれません」

と話していました。
しかしながら、相続税申告のご依頼を頂き、必要な資料やこれまでの経緯などをヒアリングしていく中で、5年ほど前におじい様が他界しておることが分かりました。
地主の家系ですから、その際も相続税がかかったことが容易に想像できます。

「おじい様がお亡くなりになった際に、相続税はどれほどかかりましたか?」

とお伺いすると、当時はだいぶ相続税がかかったそうで、後日、おじい様の相続税申告書をお預かりして拝見したところ、相続人全員で2,500万円近くかかっていました。

【ここがポイント!】

相続は滅多に起こることではありませんが、それでも中には立て続けに相続が発生することもあります。立て続けに相続が発生すると、相続税を数年前に沢山払ったのに、また、相続税を払わないといけません。
これでは、相続税の負担があまりにも大きいため、「相次」いで相続が発生した場合は、直近10年の間に支払った「相続」税の一部を「控除」できる制度を、「相次相続控除」といいます。
言葉だけですと分かりづらいため、図で見てみましょう。例えば、下記のような場合が該当します。

【イメージ図】
例1
親子相続 : 祖父(100歳)→父(80歳)→子(50歳)の場合
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例2
兄弟相続 : 兄(95歳)→妹(87歳)→妹の子(61歳)の場合
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なお、ご夫婦の場合は、一次相続の際に、配偶者の税額軽減を使用し、配偶者が負担する相続税はゼロのケースがほとんどのため、相次相続控除を使うことは滅多にありません。

そして、最も気になる点は、相次相続控除を適用することで相続税がどれほど安くなるかでしょう。結論から言えば、相次相続控除を適用するかしないかで税金が全く変わります。
なぜかというと、相次相続控除は相続税額から直接控除する制度だからです。どういうことか具体的に数字で節税効果を見てみましょう。
例えば、小規模宅地等の特例は下記のように財産評価額から控除します。
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このように、小規模宅地等の特例の評価減額が3,000万円でも相続税が1,970万円から1,760万円と210万円ほどしか安くなりません。
これに対して、相次相続控除は相続税額から控除します。
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このように、相次相続控除が300万円の場合は、相続税が1,760万円から1,460万円と300万円まるっと安くなります。
数字で比較すると、相次相続控除の効果の大きさがよく分かると思います。
しかし、これほど影響力が大きい制度が、実務では時折適用漏れが見受けられます。相続人自身が相続税申告される方はこのような制度をそもそも知りませんし、税理士に依頼しても知識として相次相続控除を知っていますが、実務では10人に1人も対象者はいないため、相続税に不慣れな税理士は

「きっとこのお客様も相次相続控除は適用しないだろう」


という税理士による思い込みでヒアリングをしなかったり、

「土地の評価や遺産分割が今回は難しいな」


と別の論点に気を取られて相次相続控除を失念してしまう方もいます。
その点、長野拓矢税理士事務所は初回面談時に漏れなく全てヒアリングします。専門家の思い込みにより業務を勝手に進めることはしませんので、ご安心ください。
今回は、小規模宅地等の特例と相次相続控除を適切に適用し、駐車場を売却せずに納税が完了しました。
相談者も

「長野先生のおかげで相続税が想定していたよりも大分少なく済み、駐車場も売らずに所有し続けることができました。母の二次相続対策もお願いします!」

と嬉しいお言葉を頂戴しました。

【まとめ】

相次相続控除のポイント
①申告しないと使えないし適用し忘れても税務署は指摘してくれない
②税理士によるヒアリング不足、知識不足、経験不足による適用し忘れが散見
③相続税を支払った方が10年以内に相続が発生した場合に適用可
さいたま市・大宮で「相続」に悩んだら、まずは、長野拓矢税理士事務所(048-779-8512)までお気軽にご相談ください。分かりやすく親切丁寧にご対応させて頂きます。

【著者プロフィール】長野拓矢(ながのたくや)|長野拓矢税理士事務所 所長
税理士として10年以上のキャリアを有する資産税の専門家。
「家族がもっと幸せになるために相続という場面では何をしたらいいか」そんなお客様の想いに寄り添った対応を心掛けると共に、最新の税制のキャッチャアップを常に行い専門家として何ができるのかを常に考え続けている。
相続だけでなく事業承継にも精通しており、地域経済を担う中小企業の経営者向けに自社株式の承継コンサルを多数行ってきた実績が評価され、埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター(公的機関)の専門家としても長年従事している。
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