相続税事例(子供に先立たれたケース)

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こんにちは。
税理士の長野です。
今回も、私が相続税申告のお手伝いをしたケースについて、論点整理をしながら、簡潔に、ご紹介させて頂きます。
実際の事例を通じて、皆様の将来的な相続に備える一助になれば幸いです。
※個人情報が漏洩しないよう、家族構成や財産内容は脚色しているので、予めご了承ください。
【家族構成】
被相続人:長女(38歳)
相続人:相談者母(69歳)
【財産構成】
マンション:2,800万円
有価証券:1,700万円
現預金:1,100万円
生命保険:母1,500万円
死亡退職金:1,000万円
合計:8,100万円
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【相談内容】
子供に相続が発生したため、相続税申告のご依頼
【ニーズ】
気持ちに整理がつかないため、相続のことは全部対応してほしい。
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子供に先立たれ、
自分たちで子供の遺品整理をすることができないので、
全部相続のことはお任せしたい。

【ご要望】

お母様は当初、
「私は娘の財産なんていらないのよ。相続しなきゃならないなら、兄である息子に渡してほしいの」
というご希望でした。
しかし、お嬢様は、独身かつお母様はご健在でしたので、法定相続人は、お母様のみとなります。
そのため、お母様にはその旨を説明し、もし息子様にお渡しされたいようでしたら、まずは、お母様が相続してから、息子様にお渡ししていきましょうとご案内しました。

【具体的な対応の様子】

子供に先立たれたお母様のことを想うと、子を持つ親として私も胸が苦しくなります。なるべくお母様にご負担にならぬ対応をしようと心に決め、終始業務にあたりました。かける言葉から気を付けました。とは言っても、税金の申告は期限があります。お嬢様は基礎控除を超える財産をお持ちでしたので、申告しないといけません。
申告するための資料は相続人であるお母様に集めてもらわないといけないのですが、その資料を集めることも辛いご状態です。
そのため、司法書士先生に協力してもらい、資料収受もなるべくこちらで請け負うよう心掛けました。
ここでポイントがどんな財産があるかをどうやって調べるか、つまり、財産調査です。
大事な通帳や契約書が、1つの引出しにまとめて保管されていれば財産調査も容易です。しかし、一般的に、成人した子供が親に財産の詳細な情報を共有することはあまりありません。
今回も、お母様はどんな財産がいくらくらいあるか全く知らなかったため、まさか、相続税の申告をしなければならないほどの財産を娘が持っていたとは信じられないといった心情でした。そのため、見つかった資料以外に漏れている財産がないか、過去の通帳を見て入出金をもとに財産調査をしました。
そして、不動産登記や預金解約手続きなど、専門家が代理で対応できる財産はなるべくこちらで相続手続きを対応させて頂きました。
ただし、いくら相続の専門家でも、請け負うことができない手続きもあります。その代表的な手続きが保険請求です。

【長野拓矢税理士事務所からのご提案】

保険証券がいくつか見つかったので、生命保険に加入していることが分かりました。そのため、当初は、
「保険金の請求はお辛いかと思いますが、ご自身でご対応お願いしますね」
とご案内しました。
それから、日にちが経ち、その後、保険の手続きは進んだか確認したところ、
「まだ対応できる気持ちになれないの」
と、仰っていました。

そのため、お母様の負担が少しでも軽くなるよう、直接お会いしたタイミングで保険会社にお電話をしてもらいました。私が隣に座って、本人確認以外はなるべく私がお電話にて説明して保険請求をサポートしました。
「中々、自分ではやろうと思えなかったから助かったわ」
と、感謝して頂けました。

そんな保険契約の中でも、手間がかかったものが、加入して間もない保険契約です。
保険会社としては、加入して間もない方がお亡くなりになった場合、本当に保険金を支払って問題ないか調査することがあります。今回も契約して間もない保険があり、実際、保険会社側で調査を行いましたが、半年近く時間がかかり、なんとか保険金を受け取ることができました。
保険金を受け取れるかどうかにより、申告内容や相続税額にも影響を及ぼすため、保険金待ちの状態でした。その保険金を受取後、すぐに申告を行い相続税申告は完了しました。

【ここがポイント!】

税理士として正しく申告することは大事なことです。しかし、お客様の立場や想いに寄り添った対応をしていくことのほうが大事なときもあります。今回は正にそのようなときでした。
具体的には、財産調査をどれほど徹底してやるかは、正直、お客様によって異なります。お客様によっては、
「そこまでしなくていいから。何か財産が新しく出てきたらそのときは税金払うから」
という方もおり、今回もこういったことを仰っていました。
こちらから色々と積極的に調査することもできましたが、お母様に万が一のことがあったときは税務署から問合せが入り、場合によっては、追加の税金とペナルティーが発生する可能性がある旨を伝えた上で、それでも、娘の財産を精査していくのは辛いことなので、
「ざっと分かる範囲で申告してほしい。後で税務署から指摘されればその通りに追加で税金も支払うから」
とのことでした。

もし税務署から連絡が入ったとしても、考え方によっては、税務署が財産を見つけてくれたと思えばいいのです。
結果として、その後、税務署から連絡が入り、当初申告の際は見つからなかった財産が見つかりました。
こちらとしてもできうる限りの調査をしたのですが、資料が無ければ分からないこともあるので、税務署から指摘を受けた旨をご連絡したところ、
「分かったわ。色々と気に掛けてくれてありがとう」
と、言って頂けました。
お金はいらないから娘が戻ってきてほしいと、仰っていたお母様の言葉は今でも忘れません。

【まとめ】

ポイントは、
①親が存命の場合、兄弟姉妹は相続できない
②急逝した場合、相続財産の把握に時間を相当要することが多い
③契約して間もない保険は、保険会社が調査することもあり保険金受け取りまで長期化する恐れあり
さいたま市・大宮で「相続」に悩んだら、まずは、長野拓矢税理士事務所(048-779-8512)までお気軽にご相談ください。分かりやすく親切丁寧にご対応させて頂きます。

【著者プロフィール】長野拓矢(ながのたくや)|長野拓矢税理士事務所 所長
税理士として10年以上のキャリアを有する資産税の専門家。
「家族がもっと幸せになるために相続という場面では何をしたらいいか」そんなお客様の想いに寄り添った対応を心掛けると共に、最新の税制のキャッチャアップを常に行い専門家として何ができるのかを常に考え続けている。
相続だけでなく事業承継にも精通しており、地域経済を担う中小企業の経営者向けに自社株式の承継コンサルを多数行ってきた実績が評価され、埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター(公的機関)の専門家としても長年従事している。
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