遺産分割する際に共有にする不動産の注意点

遺産分割する際に共有にする不動産の注意点

原則 不動産は単独で相続しよう

不動産を含む遺産分割では、原則として不動産は単独で相続することをお勧めします。相続人が複数いる場合、平等に分けるという考えから共有名義にすることがあります。ただし、不動産は預金のように均等に分けられる財産ではありません。
共有という選択は一見公平に見えますが、将来の管理や処分を考えると問題が生じやすい方法です。遺産分割は公平という観点も大事ですが、将来に不動産をどう取り扱うか、家族関係まで見据えて判断する必要があります。

共有にすると後々困る理由

共有名義の不動産は、売却や賃貸、建て替えなどの重要な行為に共有者全員の同意が必要になります。相続直後は共有者同士の関係が良好でも、年月が経てば事情が変わることもあります。
税理士としての経験では、共有のまま将来に相続を迎えるとさらに共有者が増えるケースが多く見られます。兄弟2人で共有していた不動産が、その子ども世代に引き継がれ、4人、8人と増えていくこともあります。不動産を所有し続けるという前提に立つと、共有は時間とともに意思決定を難しくする構造を持っています。

共有名義で起こりやすい具体的な問題

共有にした場合、実務では次のような問題が起こりやすくなります。
・売却や大規模修繕に全員の同意が必要になる
・共有者の1人と連絡が取れず手続きが止まる
・次の相続で権利関係がさらに複雑化する

特に問題となるのは、売却したい人と保有を続けたい人の意見が対立した場合です。一人でも反対すれば、不動産は事実上動かせません。空き家となり固定資産税だけがかかり続けるケースもあります。共有は解消が難しいため、最初の判断が重要です。

単独相続を基本に考える

不動産を単独で相続する方法としては、代償分割があります。これは不動産を取得する相続人が、他の相続人に対して代償金を支払う方法です。また、不動産を取得しない相続人には預金や有価証券をその分多めに配分するなどの調整も考えられます。
税理士としての見解ですが、共有にしないか、共有にするなら近いうちに売却も視野に入れるべきです。共有を長期間続ける前提で分割することは、将来の負担を増やす可能性があります。

将来の相続まで見据えた判断を

不動産は世代をまたいで影響を及ぼす財産です。今回の相続で共有にした結果、次の世代でさらに権利関係が複雑になることもあります。
不動産の分け方は一度決めると簡単に変更できません。将来売却する可能性があるのか、誰が管理するのか、次の相続でどうなるのかを考えたうえで判断することが大切です。目先の公平感よりも、長期的な管理のしやすさを重視する視点が、結果的に家族の負担を軽減します。

感情だけで決めないために

遺産分割は感情が絡みやすい手続きです。平等に分けたいという思いから共有を選ぶケースもあります。しかし不動産の分割は単なる数字の問題ではありません。将来の維持費や税金、管理責任まで含めて考える必要があります。
専門家の意見を交えながら、冷静に選択肢を整理することで、将来に遺恨を残さない分割が可能になります。不動産を含む相続では、慎重な判断が何より重要です。

【著者プロフィール】長野拓矢(ながのたくや)|長野拓矢税理士事務所 所長
税理士として10年以上のキャリアを有する資産税の専門家。
「家族がもっと幸せになるために相続という場面では何をしたらいいか」そんなお客様の想いに寄り添った対応を心掛けると共に、最新の税制のキャッチャアップを常に行い専門家として何ができるのかを常に考え続けている。
相続だけでなく事業承継にも精通しており、地域経済を担う中小企業の経営者向けに自社株式の承継コンサルを多数行ってきた実績が評価され、埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター(公的機関)の専門家としても長年従事している。
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