相続税事例(相続税申告が完了するまでに配偶者が死亡した場合)

相続事例7
こんにちは。
税理士の長野です。
今回も、私が相続税申告のお手伝いをしたケースについて、論点整理をしながら、簡潔に、ご紹介させて頂きます。
実際の事例を通じて、皆様の将来的な相続に備える一助になれば幸いです。

※個人情報が漏洩しないよう、家族構成や財産内容は脚色しているので、予めご了承ください。
【家族構成】
被相続人:父(88歳)
相続人:母(87歳)、姉(63歳)、弟相談者(61歳)
【財産構成】
土地:2,000万円
家屋:700万円
有価証券:1,000万円
生命保険:妻1,500万円
現預金:3,800万円
合計:9,000万円
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【相談内容】
父と母2人の相続税申告のご依頼
【ニーズ】
父の相続手続きをやっている最中に母にも相続が発生した。
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父の財産を母に相続させようとしたけど、母も父の後を追い同じ年に他界してしまったよ。

【論点】

相続手続きは1年近くかかることもあり、その間に配偶者にも相続が発生することがあります。
相談者のご両親は高齢でしたが、夫婦共に仲が良く、お父様が亡くなられた際にお母様は悲しみに暮れていたようです。私が相談者と初めて面談した際、お母様は既に体調が優れていませんでした。そして、その数ヶ月後に、お母様にもご相続が発生しました。
相談者から話を聞くと、どうやら、お父様の相続税申告は、相談者自身で対応しようとしていたようですが、お母様にも相続が発生し、どうしていいか分からずご相談頂きました。
具体的に難しい点としては、まず、遺産分割協議をどうしたらいいかでしょう。

「父の相続について、母も他界してしまったので、姉と私の2人で協議すればいいのでしょうか」

と、ご質問頂きました。
また、基礎控除、生命保険の非課税枠、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減について、適用の是非なども気になるところです。

【長野拓矢税理士事務所の対応方法】

まずは、相談者に、

「相続手続きはなんとかしますので、慌てず、お母様との最期の時間を過ごして下さい」

と伝えました。ついこの間まで両親が健在だったのに、両親が立て続けに亡くなってしまうのは非常に辛く悲しいことでしょう。心中お察しします。
お父様の申告期限まで3ヶ月ちょっとなので税理士の私も心の中では慌てていますが、幸い、相談者の方がご自身で申告しようとしていたこともあり、必要資料が大方準備されていましたので、お母様との最期のお別れにしっかりと向き合って頂きました。
お母様とのお別れが済み、改めて面談し、まず、お父様の相続税の試算を行い共有しました。
相談者が当初考えていた、お母様が全財産を相続する場合の相続税は下記の通り、ゼロとなります。
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上記のように、基礎控除、生命保険の非課税枠、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減など、相続税の計算は、相続税発生日時点の状況に基づき申告するため、お母様を含めてお父様の相続税の計算を行います。
つまり、通常通りの相続税の計算で問題ありません。
この点は初回面談の際にもお伝えしましたが、改めて上記資料をお見せすると、

「これまで考えていた通り、相続税がかからないよう、死んだ母親に相続させることができそうで良かった!」

と安心されていました。
相続手続きについても、相続人全員で遺産分割協議書を作成する前に、相続人の1人が亡くなると、遺産分割協議書はどうやって作成するのか、疑問に思うことでしょう。
結論から申し上げますと、残された相続人が複数いる場合は、亡くなった相続人の相続人が共同で遺産分割をすることとなります。
分かりづらい表現になっているので、今回のケースに当てはめて考えていきましょう。
今回は、相続人であるお母様がお父様の遺産分割協議書を作成する前に亡くなったため、お母様の相続人であるお姉様と相談者の2人がお母様の権利を共同で行使することとなります。
そのため、上記のようにお母様が全財産を相続することも手続き上は可能です。
しかし、今回は、既にお母様の相続も発生しているので、お母様に相続税がいくらかかるかも併せて確認する必要があります。 お母様の財産は金融資産で1,000万円ほどでしたので、二次相続まで計算すると下記のようになりました。
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【長野拓矢税理士事務所からのご提案】

お母様も実際にお亡くなりになっているため、それは、お父様の申告が終わった数ヶ月後に、お母様の相続税の納税が発生することを意味します。
そのため、

「母の相続税で800万円近く納税しないといけないのか。この相続税の負担は重いな。なんとか、相続税を安く抑える方法はありませんか」

と、相談者は困ってしまいましたので、このようなご提案をしました。
まずお父様の財産をこのように財産分けを行いました。
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上記2つを比較すると、右側の「お母様が全財産相続しない場合」は、相続税が一次相続で発生します。
しかし、さらに、二次相続まで試算すると下記のようになりました。
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以上より、お母様が全財産を相続しないことで、右側の「お母様が全財産相続しない場合」は、一次相続で71万円相続税が発生しますが、二次相続の相続税を抑えることができました。その結果、一次相続二次相続の合計相続税の負担は、左側の「お母様が全財産相続した場合」よりも500万円ほど抑えることができました。
今回は二次相続が将来起こるというシミュレーションではなく、実際に発生していることが通常のケースとは異なる点です。

(二次相続シミュレーションをご覧になりたい方はこちらです)
https://tax-nagano.com/omiya_column/inheritance_omiyacolumn/column9.html

【ここがポイント!】

こうやって文章でみると、相続が立て続けに起こったとしてもそんなに難しそうに見えませんが、リアルタイムで相続が立て続けに起こると、スケジュール管理が非常に大変です。
特に、遺産分割について、一次相続の財産分けをどうするかお母様の葬儀後すぐに決めなければならない状況でした。
というのも、順番では、
お父様の申告 → お母様の申告
ですが、相続税を抑えられるよう、上記シミュレーションを行う場合は、
お父様の試算 → お母様の試算 → お父様の申告 → お母様の申告
というように、工数が2倍になります。

相続税に不慣れな税理士は、まずはお父様の相続税申告を終わらせ、次にお母様の相続税申告の対応と上記のような順番になりますが、それでは、相続税が高額になります。
一方、相続税に長けている税理士は、時間が無くとも、お客様の相続税負担がなるべく抑えられるよう、上記のような試算を行いお客様に少しでも有利になるような提案をします。
相談者からは相続税が500万円抑えられたことも感謝されましたが、なにより、

「自分でやろうとしていたら、相続税申告で頭がいっぱいで母親との別れにちゃんと向き合えず後悔していたと思う。本当に長野先生に依頼して良かった。感謝しています」

と仰って頂けました。
これからもお客様の気持ちに寄り添った対応を専門家として心掛けていきます。
相続人が申告期限までの間に死亡した場合
①相続人は相続発生日時点で判断するため、
 基礎控除・生命保険の非課税枠・小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減には影響なし
②遺産分割協議は、死亡した者の相続人が全員で協同して死亡した者の代わりに権利を行使できる
③二次相続の相続税まで試算の上、一次相続を申告することが相続税の負担を抑えるポイント
さいたま市・大宮で「相続」に悩んだら、まずは、長野拓矢税理士事務所(048-779-8512)までお気軽にご相談ください。分かりやすく親切丁寧にご対応させて頂きます。

【著者プロフィール】長野拓矢(ながのたくや)|長野拓矢税理士事務所 所長
税理士として10年以上のキャリアを有する資産税の専門家。
「家族がもっと幸せになるために相続という場面では何をしたらいいか」そんなお客様の想いに寄り添った対応を心掛けると共に、最新の税制のキャッチャアップを常に行い専門家として何ができるのかを常に考え続けている。
相続だけでなく事業承継にも精通しており、地域経済を担う中小企業の経営者向けに自社株式の承継コンサルを多数行ってきた実績が評価され、埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター(公的機関)の専門家としても長年従事している。
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