相続税事例(相続税が安くなる財産分け)

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こんにちは。
税理士の長野です。
今回も、私が相続税申告のお手伝いをしたケースについて、論点整理をしながら、簡潔に、ご紹介させて頂きます。
実際の事例を通じて、皆様の将来的な相続に備える一助になれば幸いです。

※個人情報が漏洩しないよう、家族構成や財産内容は脚色しているので、予めご了承ください。
【家族構成】
被相続人:父(87歳)
相続人:母(82歳)、長男(60歳) 、次男(57歳)
【財産構成】
土地:2,000万円
家屋:100万円
現預金:5,200万円
保険:1,500万円(妻500万円、長男500万円、次男500万円)
合計:8,800万円
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【相談内容】
父に相続が発生したため、相続税申告のご依頼

【ニーズ】
相続税をなるべく安く抑えたい。

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全財産を母に相続させて税金ゼロでもいいかなと考えているのだけど、
将来、母の相続のときに沢山税金がかかるって、相続セミナーで聞いたことがあるぞ!
うちも同じかな?でもなるべく税金は安くしたいんだ!

【論点】

子供たち2人とも持ち家があるため、小規模宅地等の特例はお母様しか使えません。
そのため、実家は母が相続することで決まりです。
その上で、お父さんが残してくれた財産をなるべく相続税を負担せずに相続できるかがポイントです。

【長野拓矢税理士事務所の対応方法】

長野拓矢税理士事務所としては、まず、相談者の希望をお伺いします。こちらから勝手に提案せず、まずはお客様の率直な質問に返答することは大切なことです。
専門家はどうしてもこれまでの経験から、このケースではこうすべきということが感覚的に分かるようになります。しかし、お客様はそのような経験は当然無いため分かりません。
今回は一次相続でお母様が全財産を相続すると

「父の相続のときは税金がかからないけど、母の相続のときは税金が沢山かかるんでしょ」

と相談者がご存知でした。
しかし、とはいってもお母様の相続のときに相続税がいくらかかるか分からないと、お客様目線に立てば判断できません。
そのため、長野拓矢税理士事務所は、一次相続での財産分けについては、相続人であるお母様の財産もヒアリングし、将来、お母様の相続、つまり、二次相続のときにどれくらい相続税がかかるか、試算した上で判断して頂くことを重視しています。 今回は下記のような計算になりました。
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この試算を数字で見ると、二次相続について

「お母様に将来相続が発生すると税金がけっこうかかるな」

と理解頂けるのではないでしょうか。
逆に、口頭で税理士から

「沢山相続税がかかるから一次相続でお母様が全財産を相続するのは止めたほうがいいですよ」

と言われても、お客様は沢山ってどれくらいなのか判断できません。しかし、お客様は税理士に数字で見たいと言い出せない方もいらっしゃるのではないでしょうか。こういったお客様の気持ちに寄り添うことは相続に携わる税理士が大事にしなければならないことの1つだと私は思います。

【長野拓矢税理士事務所からのご提案】

相続の専門家としてできることは、お客様のニーズは

「税金をなるべく安くすること」

ですので、税金がなるべくかからない財産分けをご案内すると下記のようになります。
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如何でしょうか。
パターン①と比べてパターン②のほうが一次相続と二次相続で600万円以上も相続税が変わります。これは非常に効果的ですね。相続税の負担という観点ではパターン②が優れているということが分かります。
このように、一次相続での財産分け次第で、二次相続での相続税が大きく異なります。そのため、一次相続と二次相続の相続税の合計額をなるべく抑えたい方は、一次相続の際に、二次相続まで試算することをおすすめします。そして、二次相続の試算を踏まえて、一次相続の財産分けを決めていきましょう。

【ここがポイント!】

以上より、パターン②ということで進めていこうと検討しておりましたが、真にお客様に寄り添うならば、もう少し検討の余地はありそうです。
皆様、お気付きでしょうか。
そうです、お母様の生活です。シミュレーションでは順番でお母様に二次相続が発生していますが、今現在、お母様はご健在なのです。
そのため、もちろん、税理士としてできることは数字面からのみですが、お母様に将来相続が発生するまで健やかな生活を送るためにはどうしたらいいかまで考えなければなりません。
今回のケースでは、お母様ご自身の財産は2,000万円あります。しかし、2,000万円問題が少し前に話題となったように、この2,000万円で十分生活ができるか検証する必要があります。というのも、今回、お母様は子供たちに一存しておったので、お母様ご自身の気持ちは聞いておりませんでした。
次男が面談の際に、ふと、

「お母さんの生活が心配だな」

と、仰いました。
すかさず、私が

「2,000万円あるので一般的には大丈夫かと思いますが、何でそう思われましたか」

とお伺いすると、
長男も

「私たち兄弟は都内で自宅を構えているので、北関東の実家には中々戻ることができません。そのため、母も今は身の回りの世話を自分でできていますが、もう少し母が年を取ると、日々の生活に支障が出ないか心配しています」


とのことなので、どこかのタイミングで老人ホームを検討しているそうです。
すかさず、私から

「最後にこの財産分けでいいか、お母様を交えて3人で話し合ってみては如何でしょうか。例えば、どんな老人ホームがいいか、具体的に考えてみると料金相場も分かるので、それを踏まえて財産分けを検討してみるのも良いですね」

とご案内しました。
お子様お2人もそれは良いと仰って下さり、まだ申告期限まで時間があったので、2人で予定を合わせて土日に帰省してお母様と3人で話し合ったそうです。
その結果、下記のような財産分けで申告することとなりました。
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お母様が過ごしたい生活ができる老人ホームには5,000万円あれば十分賄えることがわかりました。
数字だけを見れば、400万円以上かかることになっていますが、お金を使ってしまえばもちろんその分相続税は減ります。お母様の生活のために使えば、きっと、お父様も喜んでくれることでしょう。
相談者も、

「無事に終わって安心しました。母がこれからも安心して生活できそうだと言っておりました。ありがとうございました

と、仰って下さいました。税金を安くすることだけが税理士の仕事ではないですね。
一次相続の財産分けは下記がポイント!
①相続税がかからないからといって配偶者が全財産を相続しない
②二次相続までシミュレーションする
③残された配偶者の生活まで考慮する
さいたま市・大宮で「相続」に悩んだら、まずは、長野拓矢税理士事務所(048-779-8512)までお気軽にご相談ください。分かりやすく親切丁寧にご対応させて頂きます。

【著者プロフィール】長野拓矢(ながのたくや)|長野拓矢税理士事務所 所長
税理士として10年以上のキャリアを有する資産税の専門家。
「家族がもっと幸せになるために相続という場面では何をしたらいいか」そんなお客様の想いに寄り添った対応を心掛けると共に、最新の税制のキャッチャアップを常に行い専門家として何ができるのかを常に考え続けている。
相続だけでなく事業承継にも精通しており、地域経済を担う中小企業の経営者向けに自社株式の承継コンサルを多数行ってきた実績が評価され、埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター(公的機関)の専門家としても長年従事している。
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