相続人が海外に居住しているケース【相続税事例】

相続税事例(相続人が海外に居住しているケース)
こんにちは。
税理士の長野です。
今回も、私が相続税申告のお手伝いをしたケースについて、論点整理をしながら、簡潔に、ご紹介させて頂きます。
実際の事例を通じて、皆様の将来的な相続に備える一助になれば幸いです。
※個人情報が漏洩しないよう、家族構成や財産内容は脚色しているので、予めご了承ください。
【家族構成】
被相続人:父(88歳)
相続人:相談者長男(57歳)、弟(54歳)、母(81歳)
【財産構成】
自宅:3,800万円
現預金:1,800万円
有価証券:600万円
生命保険:母500万円
財産合計: 6,700万円
家族構成

財産構成

【相談内容】
父に相続が発生したため、相続税申告のご依頼
【ニーズ】
・次男は海外に居住、つまり、非居住者だが通常の相続税申告と比べて注意点はあるのか
・日本とは別に居住地である海外にて別途申告が必要なのか
・次男は印鑑証明書を取れないが遺産分割協議書はどう作成すればいいか
相談者長男

僕は海外駐在でタイに何年も住んでいるのだけど、
父から財産をどうやって相続すればいいのかな。

【論点】

長男からご相続の相談を頂きました。財産としては一般的な内容ですが、弟が海外在住しているため、どのように手続きをすればいいか悩んでいました。
通常は、日本の相続税だけを考えれば問題ないのですが、被相続人または相続人が海外に在住している場合や財産を海外に保有している場合は、日本とは別に、海外でも相続税の対象になるかどうかを確認しなければなりません。
この点が通常の相続と比べて、難しい点です。
また、手続き面においても注意が必要です。通常は、遺産分割協議書に実印にて押印し印鑑証明書を添付して遺産分割協議が成立します。そのため、申告時も印鑑証明書を付けて遺産分割協議書を提出します。
しかし、非居住者は日本に住民票がなく印鑑登録できないため印鑑証明書を取得できません。では非居住者が遺産分割協議を締結するにはどうしたらいいかと言いますと、大使館や領事館にてサイン証明書を遺産分割協議書に合綴して添付することで印鑑証明書の代わりとなりますので、安心してください。

【長野拓矢税理士事務所の対応方法】

相続人の中で非居住者がいる場合、家族間で意思の疎通が取れるかどうかが大事なポイントです。大前提として、相続人のうちに非居住者の方がいれば、遺言書を準備しておいたほうが相続手続きは圧倒的に簡単です。ただ、遺言書がない場合は、遺産分割協議書を締結するしかありません。つまり、財産をどう分けるか相続人間で話し合って決めなければなりません。
このとき心配な点は、家族関係次第ですが、相続人の中に非居住者がいると、距離的に財産の分け方を話し合う場をそもそも設けることが通常に比べて難しいことです。
会おうと思っても、「では来週に会おう」と思って会える距離感ではないため、いざ会うとなると早くて来月、通常は、数ヶ月後ではないでしょうか。
そのため、通常の相続税申告よりもスケジュール管理をしっかりしないと申告期限がすぐに到来します。
なお、海外での相続税が対象になるかどうかは、弊事務所では、最初の段階で、相続人自身で確認頂ける場合でしか対応できないことを伝えています。我々も分かる範囲でお答えすることはありますが、現地の詳細な税制に精通していないのに、安易に相続税がかかる、かからないと専門家が発言してしまいますと、一般の方々にとっては、「専門家が現地では税金がかからなそうと言っているのだから、たぶんかからないだろう」と変な誤解を与えかねません。我々は日本の税法における税理士であり、世界各国の税法に精通しているわけではありません。そのため、「○○だと思いますが、必ず現地の専門家に相談して、日本とは別に、現地でも相続税がかかるかどうかを判断してください」と伝えています。

【ここがポイント!】

長野拓矢税理士事務所は、相続人全員に対して寄り添うことに気を付けています。
特に今回の事例で、一番不安を感じている方は非居住者の方自身です。日本にお住まいの相続人と比べて、非居住者の相続人と、我々専門家が何度もお会いして説明することは物理的に難しいからです。やはり、直接会わないと詳細なニュアンスが伝えきれないこともあろうかと思います。
しかしながら、昨今はウェブ会議を通じて資料共有もしながら打合せすることができます。国によっては時差の影響でやり取りする時間帯も限られることもありますので、非居住者の方と通常のやり取りはメールになることが多いです。ただ、リアルタイムでメール交換できないケースも多いため、なるべく1回のメールで詳細なニュアンスまで伝わるよう、いつも以上に丁寧で分かりやすい文章になっているか都度気を付けます。
文章ですとどうしても「口で伝えると簡単なのに文章にすると難しい」表現もあります。そのため、人によっては非居住者の方が、伝えることを遠慮してしまうこともあるかもしれません。そんな状態で遺産分割協議を締結しても、その後、相続人間でわだかまりを抱えてしまうこととなってしまうかもしれません。
専門家としてもつい会いやすい日本にお住まいの相続人のみ丁寧に説明し、非居住者の方への説明は不足してしまいがちですが、そうならぬよう、非居住者の方であっても、同程度の情報提供や、少しでも気軽に相談しやすい環境を整えるよう、いつも以上に気を付けて対応していきます。

今回は、
「家族だけで話し合ってもまとまらなかったと思います。家族みんなに気を遣ってフォローして下さりありがとうございました」
と、仰って頂けました。私の仕事ぶりを評価されたようで嬉しく思いました。

【まとめ】

相続人のうち非居住者の方がいる場合
①遺産分割協議書には印鑑証明ではなくサイン証明書を合綴する
②家族全員で話し合う場面が限られていたり、資料は国際郵便でやり取りしたりするため、スケジュール管理をしっかり管理しないとあっという間に申告期限が到来する
③日本の相続税とは別に、現地の相続税がかかるかどうかを必ず現地の専門家に相談して判断してもらう
さいたま市・大宮で「相続」に悩んだら、まずは、長野拓矢税理士事務所(048-779-8512)までお気軽にご相談ください。分かりやすく親切丁寧にご対応させて頂きます。

【著者プロフィール】長野拓矢(ながのたくや)|長野拓矢税理士事務所 所長
税理士として10年以上のキャリアを有する資産税の専門家。
「家族がもっと幸せになるために相続という場面では何をしたらいいか」そんなお客様の想いに寄り添った対応を心掛けると共に、最新の税制のキャッチャアップを常に行い専門家として何ができるのかを常に考え続けている。
相続だけでなく事業承継にも精通しており、地域経済を担う中小企業の経営者向けに自社株式の承継コンサルを多数行ってきた実績が評価され、埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター(公的機関)の専門家としても長年従事している。
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