相続に関するよくある誤解と正しい知識

相続に関するよくある誤解と正しい知識

節税することが全てではない

相続対策というと節税ばかりに目が向きがちですが、大切なのは節税だけではありません。
確かに相続税を抑えることは重要ですが、それ以上に重視すべきなのは家族全員の納得感です。相続は単なる財産の分配ではなく、家族関係にも大きな影響を与えるからです。
しかしながら、実際は、目先の財産分けや節税対策にとらわれてしまい、相続人同士の関係が悪化してしまうことが散見されます。中には、相続をきっかけに親族関係が断裂してしまうこともあります。
円満な相続になってこそ、本来の目的が達成されるといえます。

節税偏重が招く誤解

相続におけるよくある誤解の一つが、節税対策をすればするほど良いという考え方です。
当然ながら相続税をなるべく安くしたいと誰しも思いますが、実際には、節税を優先しすぎることで相続人間で不公平感が生まれるケースがあります。
特定の相続人に有利な配分や、生前贈与の偏りなどが原因となり、家族間の信頼関係が損なわれることも少なくありません。
税制はあくまで一つの要素に過ぎず、家族全員のバランスを考えることが重要です。

節税が招く相続トラブル

実務の現場では、節税を意識しすぎた結果、家族関係が悪化してしまうケースを見てきました。税金が安くなるに越したことはありませんが、それが原因で子供同士の対立が生じたり、配偶者が孤立してしまうこともあります。実際に見られるトラブルとしては次のようなものがあります。

・特定の子だけに多く財産を集中させたことで不満が生じる
・生前贈与の偏りが後から判明し問題になる
・配偶者や他の相続人の生活資金が十分に確保されていない分け方になっている

このような状況は一度こじれると解決が難しく、関係修復に時間がかかる傾向があります。

家族関係を守るためにできることは

相続対策で重要なのは、税金だけでなく法務や家族関係を含めた総合的な視点です。遺言書の作成や生前の話し合いなどを通じて、全員が納得できる形を目指すことが大切です。
家族の様々な事情で特定の相続人に財産が集中してしまうケースもあるかもしれませんが、親自身も遺言書を書いただけで安心せずに、生前中に家族全員で集まり、親の想いを伝えて家族に納得してもらうことができれば、万が一の際にも安心でしょう。言い換えれば、最期の親の務めともいえます。
沢山の相続案件に立ち会っている税理士の視点からも、相続の場面では、相続税の税負担以上に、まず家族関係を良好に保てるかどうかを重視すべきだと考えています。もちろん無駄な税負担は避けるべきですが、相続対策の中で節税はあくまで一部であり、優先順位を誤ると本末転倒になります。税金以上に円満な関係を維持することが長期的な安心につながることでしょう。
自分の家族が相続トラブルとならぬよう、故人の生前における事前準備と家族への丁寧な説明、そして、家族からの理解が何よりも大事な相続対策だといえます。

バランスの取れた相続対策を

相続に関する誤解の多くは、節税に偏った考え方から生まれます。しかし実際には、税金と家族関係のバランスを取ることが不可欠です。節税することが全てではなく、納得感のある遺産分割と円滑な関係の維持こそが重要です。
相続を機に家族関係が悪化することは、故人も望んでいないはずです。相続税がかかるほどの財産を残してくれたのは、何よりも家族のことを考えてのことです。しかしながら、その財産をめぐって家族が対立しては故人も悲しむことでしょう。
財産を残してくれた故人への感謝の気持ちを忘れずに、相続対策は数字だけでなく、人のつながりを守る視点で進めることが重要です。
専門家の助言を受けながら、家族全員が安心できる形を目指すことが、後悔のない相続につながります。

【著者プロフィール】長野拓矢(ながのたくや)|長野拓矢税理士事務所 所長
税理士として10年以上のキャリアを有する資産税の専門家。
「家族がもっと幸せになるために相続という場面では何をしたらいいか」そんなお客様の想いに寄り添った対応を心掛けると共に、最新の税制のキャッチャアップを常に行い専門家として何ができるのかを常に考え続けている。
相続だけでなく事業承継にも精通しており、地域経済を担う中小企業の経営者向けに自社株式の承継コンサルを多数行ってきた実績が評価され、埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター(公的機関)の専門家としても長年従事している。
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